実務

運行管理者の1日

出庫前・運行中・帰庫後に何をしているのか
最終更新日:2026年8月23日
運行管理者試験の勉強をしていると、「点呼」「運行指示書」「乗務割」「業務記録」といった項目がばらばらに並んだリストとして頭に入ってきます。覚えることは覚えたけれど、それが1日のどこで、どういう順番で行われるのかは見えにくいのではないでしょうか。

実際の運行管理は、出庫前 → 運行中 → 帰庫後という時間の流れのなかにあります。この記事では、その流れに沿って運行管理者が何をしているのかを整理しました。

試験項目が実務のどこに位置するのかが分かると、丸暗記していた内容が順番として思い出せるようになります。これから運行管理者になる方にも、実務のイメージづくりに使っていただけます。

🗓️その日の前に済ませていること

1日の流れに入る前に、前提を確認しておきます。運行管理者の仕事は当日だけで完結しません。当日の朝までに、次のものが用意されています。

用意するもの内容
乗務割事業者が定めた勤務時間及び乗務時間の範囲内で、運行管理者が作成する。改善基準告示の拘束時間・運転時間・休息期間に適合させる
運行指示書一般貸切は運行ごとに作成し、その写しを運転者等に携行させる。運行の経路、主な経過地の出発・到着の日時、休憩・仮眠の場所と時間などを記載
交替運転者の配置実車距離が配置基準を超える運行や、疲労により安全な運転を継続できないおそれがある運行では、あらかじめ交替運転者を配置する
👉 「当日に判断する」では間に合わない
運行が改善基準告示に適合するかどうかは、乗務割と運行指示書を作った時点で決まっています。当日の朝に「今日は拘束時間が長いな」と気づいても、もう動かせません。
運行管理者の仕事の実質的な部分は、この計画段階にあります。試験でも、図表を見て「この運行計画は改善基準告示に違反しているか」を判定させる問題が繰り返し出ます。

🌅出庫前 ─ 送り出すまでの7ステップ

ここからが当日です。運転者が出社してから出庫するまでに、次の順で進みます。

やること中身
1運行予定の確認当日の運行、担当運転者、車両を確認する。前日からの変更がないかも見る
2運行指示書の確認経路、休憩場所、到着予定時刻。途中で変更が生じたら運転者に電話等で指示し、その内容を記載する
3業務前点呼の開始対面が原則。運行上やむを得ない場合は電話その他の方法(要件を満たせば遠隔点呼・自動点呼も可)
4酒気帯びの確認目視等による確認に加え、アルコール検知器を使用(規則第24条第4項)。実務では点呼の最初に行うのが一般的
5健康状態の確認疾病、疲労、睡眠不足その他安全な運転をすることができないおそれの有無
6日常点検の結果確認運転者が実施した点検の報告を受ける。異常があれば整備管理者へつなぎ、運行の可否は整備管理者が決定する
7必要な指示経路上の注意箇所、気象・道路状況、当日固有の注意点

3〜7が業務前点呼そのものです。試験では「業務前点呼で確認する事項は3つ」と覚えますが、実務では運行指示書を渡すところから一続きになっています。

👉 酒気帯びの確認を最初に行う理由
条文は確認事項を列挙しているだけで、順序までは定めていません。ただ実務では、点呼の最初にアルコール検知器を吹いてもらうのが一般的です。

酒気帯びが検知されればその時点で乗務させられないので、健康状態を聞いても日常点検の報告を受けても意味がなくなるからです。先に結論が出る項目から確認したほうが、運転者を待たせる時間も短くなります。

ここで止める判断ができるか

酒気帯びが検知されれば、数値の如何を問わず出庫させられません。0.15mg/Lは道路交通法上の処罰の基準であって、運行管理上の乗務可否の基準ではありません。

体調に問題があると判断した場合も同じです。止めれば代わりの運転者を探すことになり、旅客を待たせます。その場では誰からも歓迎されない判断ですが、これができる体制を平素から作っておくことが運行管理者の準備の中身です。

⚠️ 「運行上やむを得ない場合」は狭い
対面によらない点呼が認められるのは、遠隔地で業務を開始・終了するため営業所で対面できない場合などです。
車庫と営業所が離れている、早朝・深夜で点呼執行者が出勤していない——これらは「運行上やむを得ない場合」に該当しません。試験でも通達の解釈がそのまま問われます。

📡運行中 ─ 見えない相手を管理する

出庫したら、運転者は営業所にいません。ここからの運行管理は情報のやりとりになります。

① 運行状況の把握

デジタル式運行記録計やGPSを活用した動態管理システムで、車両の位置と走行状況を把握します。遅延や経路の逸脱を早期に検知できれば、次の手を打てます。

なお運行記録計による記録の対象は、一般貸切は原則としてすべての事業用自動車、一般乗合は路線定期運行・路線不定期運行のうち起点から終点まで100kmを超える運行系統に係るものなどです。乗車定員では決まりません。

② 遅延・事故・異常への対応

渋滞で到着が遅れる、車両に不具合が出る、旅客が体調を崩す。運行中に起きることは事前に全部は読めません。連絡を受けたら、安全を優先した指示を出します。

ここで気をつけたいのは、遅れを取り戻す方向の指示を出さないことです。速度を上げる、休憩を削るという判断は、連続運転時間の違反や事故に直結します。運行計画に余裕がなければ、そもそもこの場面で選べる手が少なくなります。

③ 異常気象時の措置

異常気象、天災その他の理由により輸送の安全の確保に支障が生じるおそれがあるときは、運行管理者が運行の中止、経路の変更その他必要な措置を講じます。判断の根拠は記録しておきます。

👉 判断するのは運転者ではない
現場にいるのは運転者ですが、運行中止の判断をするのは運行管理者です。運転者に「どうしますか」と委ねてはいけません。
逆に言えば、運転者が状況を報告しやすい関係がないと、この仕組みは機能しません。「報告したら怒られる」と思われた時点で、情報が上がってこなくなります。

④ 業務途中点呼の要否

一般貸切旅客自動車運送事業者が夜間において長距離の運行を行う場合は、業務の途中で少なくとも1回、点呼を行います(規則第24条第3項)。

「夜間において長距離の運行」は、通達で実車運行区間の距離が100kmを超え、かつ実車運行の開始又は終了の時刻が午前2時から午前4時の間にあるか、その時刻をまたぐ運行と定義されています。回送区間は実車運行に含みません。

⚠️ 貨物の「中間点呼」と混同しない
貨物自動車運送事業の中間点呼は「業務前・業務後の点呼がいずれも対面等でできないとき」に行うものです(貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第3項)。要件がまったく異なります。

また、旅客の業務途中点呼で確認するのは自動車・道路及び運行の状況疾病・疲労・睡眠不足等のおそれで、酒気帯びの有無は条文上の確認事項に入っていません。アルコール検知器の使用義務を定めた第4項も、第1項(業務前)と第2項(業務後)に対応しています。

🏁帰庫後 ─ 終わらせて、次につなぐ

車両が戻ってきたら、その日を締めます。ここで手を抜くと、翌日以降に響きます。

やること中身
1業務後点呼の開始対面が原則。要件を満たせば遠隔点呼・業務後自動点呼も可
2酒気帯びの確認業務前と同じくアルコール検知器を使用。実務では帰庫後もこれを最初に行うのが一般的
3運行状況の報告自動車、道路及び運行の状況について報告を求める
4交替運転者への通告交替した場合、次の運転者に伝えた内容の報告を求める
5事故・異常の確認ヒヤリとした場面、車両の不具合、旅客からの申し出
6記録の作成・保存点呼記録、業務記録。一般貸切は3年間保存(録音・録画データは90日間)
7必要な指導報告内容を踏まえた指導。実施したら記録し、3年間保存
👉 帰庫後も酒気帯びが先
出庫前と同じ理由です。運行中の飲酒がなかったことを最初に押さえてしまえば、そのあとの報告を落ち着いて聞けます。

運行の状況の報告は、内容によっては時間がかかります。先に短時間で終わる確認を済ませておくという、実務上の段取りでもあります。

業務後点呼で「疲労」は確認しない

細かい点ですが、試験でよく問われます。業務後点呼の確認事項に疾病・疲労・睡眠不足は入っていません。運行の状況の報告と、交替時の通告の報告、そして酒気帯びの確認です。

「業務後も疲労を確認する」という選択肢は誤りになります。3種類の点呼を整理すると次のとおりです。

確認事項業務前業務途中業務後
日常点検の状況
酒気帯びの有無
疾病・疲労・睡眠不足
自動車・道路・運行の状況
交替運転者への通告

報告は次の運行計画の材料になる

「あの交差点は右折が見にくい」「あのサービスエリアは大型が停めにくかった」という報告は、次の運行指示書に反映できる情報です。形式的に「異常なし」で済ませると、この情報が失われます

運行管理は1日で完結する仕事に見えて、実際は帰庫後の報告が翌日以降の計画に戻っていく循環になっています。

👥運行管理者は1人で全部やるのか

ここまでの流れを読むと、朝から晩まで営業所に張り付くことになりそうです。実際には補助者を置いて分担します。

項目内容
補助者になれる人運行管理者資格者証を有する者、又は国土交通大臣が認定する講習実施機関の基礎講習を修了した者
行える点呼の割合運行管理者が自ら行う点呼が総回数の3分の1以上。裏返すと補助者は3分の2以下
権限の範囲指示された範囲で点呼などを行う。運行の可否を最終的に決定する権限はない
異常を認めたとき直ちに運行管理者に報告し、指示を仰ぐ
選任の届出一般貸切のみ必要(事由発生日から15日以内)。一般乗合・一般乗用は不要
👉 「補助者に権限がない」わけではない
補助者は運行管理者の業務を補助する者で、指示された範囲で点呼を行う権限はあります。ないのは運行の可否を最終的に決定する権限です。
早朝・深夜の点呼を補助者が担い、判断が必要な場面で運行管理者に上げる。この形が現実的です。

なお、事業用自動車の数によっては運行管理者を複数選任します。一般乗合・一般乗用は「車両数÷40(1未満切捨て)+1」一般貸切は「車両数÷20(1未満切捨て)+1」で、貸切は最低2名、うち1名は運転者と兼務しない専任者です。

✍️試験ではどう問われるか

ここまでの流れは、そのまま試験の出題範囲です。時系列と結びつけて整理しておくと、選択肢を見た瞬間に「それは出庫前の話」「それは帰庫後の話」と切り分けられます。

「事業者の業務」と「運行管理者の業務」の区別

最も出題が多い論点のひとつです。

事業者が行うこと運行管理者が行うこと
運行管理規程を定める定められた規程に従って業務を行う
勤務時間及び乗務時間を定めるその範囲内で乗務割を作成する
アルコール検知器を備え置く点呼で検知器を使用する
事業計画の変更の認可申請
運行管理者を選任し、届け出る

「運行管理規程の制定」「事業計画の認可申請」を運行管理者の業務とする選択肢は誤りです。運行管理者は与えられた枠組みのなかで運行を回す立場だと押さえてください。

数字の整理

項目数値
1日の拘束時間原則13時間以内、最大15時間(14時間超は週3回が目安)
休息期間継続11時間以上が基本、継続9時間を下回らない
連続運転時間4時間を超えない。中断は1回連続10分以上・合計30分以上
運転時間2日平均1日9時間、4週平均1週40時間(貸切は労使協定で16週まで44時間)
実車距離(交替運転者の配置基準)昼間ワンマン500km(条件付き600km)、夜間ワンマン400km(条件付き500km)
記録の保存(一般貸切)点呼記録・業務記録・運行指示書・運送引受書は3年間、録音・録画は90日間
💡 流れで覚えると忘れにくい
「業務前点呼の確認事項は?」と聞かれて3つ挙げるより、出庫までの流れを頭のなかで再生するほうが確実です。運転者が出社して、点検して、点呼を受けて、指示をもらって出ていく。その順番を追えば、日常点検が業務前だけの事項であることも自然に出てきます。
帰庫後も同じです。戻ってきたから運行の状況を報告する。交替していたら通告の報告もある。だから業務後は「報告+酒気帯び」なのだ、と理屈で押さえられます。

📌まとめ

  • 運行管理の実質は計画段階にある。乗務割と運行指示書を作った時点で、改善基準告示に適合するかどうかは決まっている
  • 出庫前は、運行予定と運行指示書の確認から業務前点呼へ。点呼では酒気帯び → 健康状態 → 日常点検の報告 → 指示の順で進めるのが実務上一般的
  • 運行中は、運行状況の把握、遅延・事故・異常への指示、異常気象時の措置。中止の判断をするのは運行管理者
  • 業務途中点呼は一般貸切が夜間に長距離の運行を行うとき。貨物の中間点呼とは要件が違う
  • 帰庫後も酒気帯びの確認から。そのあと運行状況の報告、記録の作成・保存、必要な指導。報告は次の運行計画の材料になる
  • 補助者には指示された範囲で点呼を行う権限があるが、運行の可否を最終的に決定する権限はない

試験項目をばらばらに覚えるのではなく、1日の時間の流れに沿って並べ直すと、記憶が持ちやすくなります。そして実際に運行管理者になったとき、この流れがそのまま日々の仕事になります。

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