運行管理者になるには
【受験資格・基礎講習・取得の流れ】

実際に取得した現役バス運転手が解説します
最終更新日:2026年8月2日
📌 このページについて 「会社から運行管理者の資格を取ってこいと言われた」「バス業界でキャリアアップしたい」——そんな方に向けて、運行管理者(旅客)になるまでの流れをまとめました。

筆者は観光バスの運転手として働きながら、会社の指示でこの資格を取得しました。受験資格の確認から資格者証が手元に届くまで、実際に通った道のりを、制度の説明と体験の両方で書いています。

🚌運行管理者とはどんな資格か

バスやタクシーなどの旅客運送事業では、営業所ごとに運行管理者を選任する義務があります(道路運送法第23条)。安全な運行を管理する、いわば現場の司令塔です。

運行管理者の主な仕事

  • 点呼の実施…業務前・業務後に運転者の酒気帯びや健康状態を確認する
  • 乗務割の作成…改善基準告示を守った勤務シフトを組む
  • 運行指示書の作成…一般貸切では運行ごとに作成し、運転者に携行させる
  • 指導監督…運転者への安全教育、適性診断の受診管理
  • 記録の管理…業務記録、運行記録計の記録、乗務員等台帳の保存

運転者が安全に走れるかどうかは、出庫前の点呼で決まります。体調が悪い運転者を「大丈夫だろう」で出してしまえば、その判断が事故につながります。運行管理者は「行かせない」と言える立場の人です。

👉 なぜ資格が必要なのか
2016年の軽井沢スキーバス転落事故、2022年の静岡での貸切バス横転事故——重大事故のあと必ず問題になるのが運行管理の不備です。点呼をしていなかった、記録が改ざんされていた、無理な運行計画だった。だからこの資格は国家資格として位置づけられ、選任が法律で義務づけられています。

キャリア面での価値

バス・タクシー・トラック業界では、運転者から管理職へのステップアップに直結する資格です。営業所には必ず必要な人材なので、転職市場でも評価されます。試験は「貨物」と「旅客」に分かれていますが、内容の約8割は共通しているため、片方を取れば後からもう片方も取りやすくなります。

🗺️資格を取る2つのルート(全体図)

運行管理者になるには、まず受験資格を満たす必要があります。ここが最初の関門で、意外と勘違いが多いところです。

運行管理者資格取得までの流れ 実務経験1年以上か基礎講習修了のどちらかで受験資格を得て、受験申請、CBT試験、合格発表、資格者証の交付申請を経て運行管理者になれることを示した図 STEP 1 受験資格を満たす(どちらか一方でOK) A:実務経験 運行管理に関し 1年以上の実務経験 B:基礎講習 国交大臣認定機関の 基礎講習を修了 STEP 2 受験申請(インターネット申請) 本人確認書類・顔写真をアップロード 受験手数料等を支払い(コンビニ・カード・ペイジー) STEP 3 CBT試験を受ける テストセンターのパソコンで受験 30問中18問以上、かつ分野別の基準を満たせば合格 STEP 4 合格 → 資格者証の交付申請 運輸支局へ交付申請(合格発表から3ヵ月以内) ※3ヵ月を過ぎると合格が無効になるので注意 運行管理者として選任される
図1:受験資格の取得から資格者証の交付までの流れ。STEP1でAかBのどちらかを選ぶ。

📋受験資格 ─ 実務経験1年 or 基礎講習

運行管理者試験は誰でも受けられる試験ではありません。次のどちらかを満たす必要があります。

受験資格(運行管理者試験センター) ① 自動車運送事業(貨物軽自動車運送事業を除く)の用に供する事業用自動車、又は特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車(緑ナンバー)の運行の管理に関し、試験日の前日までに1年以上の実務経験を有する方
② 国土交通大臣が認定する講習実施機関において、試験の種類に応じた基礎講習を修了した方、または試験日の2週間前までに修了予定の方
4コマ受験資格 ─ 運転歴=実務経験ではない
1
自信ありげな新人ドライバー
新人ドライバーバスを10年運転しています。
「実務経験1年以上」なんて余裕でクリアですよね!
2
指を立てて指摘する運行管理者
運行管理者そこが一番の落とし穴だ。
受験資格になるのは「運行の管理」に関する実務経験だぞ。
3
驚く新人ドライバー
新人ドライバー運転していただけでは認められないんですか?
じゃあ僕は受験できない……?
4
指を立てて説明する運行管理者
運行管理者落ち着け。もう1つのルートがある。
基礎講習を修了すれば、実務経験がなくても受験できる
迷うくらいなら、こちらのほうが確実だ。
🎯 受験資格は2ルートA:運行の管理に関し1年以上の実務経験B:基礎講習の修了。どちらか一方を満たせば受験できます。
運転業務そのものや、営業・総務・経理といった管理業務は実務経験として認められない場合があります。判断に迷う場合は、3日間(16時間以上)の基礎講習を受けるルートが確実です。
⚠️ 一番の落とし穴:運転手歴は実務経験にならないことがある
「バスを10年運転しているから実務経験1年は当然クリア」と考えてしまいがちですが、受験資格となるのは「運行の管理」に関する実務経験です。運転業務そのものや、営業・総務・経理といった管理業務は実務経験として認められない場合があります

点呼の補助、乗務割の作成補助、運行管理業務の補助などに従事していれば該当しますが、判断が微妙なところです。迷ったら基礎講習を受けるルートのほうが確実です。

どちらを選ぶべきか

比較A:実務経験1年以上B:基礎講習を受ける
費用かからない1万円前後(機関により異なる)
時間かからない3日間(16時間以上)
確実性実務経験の内容によっては認められない可能性あり確実
必要な手続実務経験承認者(会社の上司等)によるメール承認が必要基礎講習修了証または運行管理者講習手帳をアップロード
学習面講習で試験範囲の基礎を一通り学べる
👉 未経験から目指す人へ
運送業界で働いていなくても、基礎講習を受ければ受験できます。この資格が「未経験からでも挑戦できる国家資格」と言われるのはこのためです。転職を考えていて先に資格を取っておきたい、という場合も基礎講習ルートになります。

📚基礎講習について

基礎講習は、国土交通大臣が認定した講習実施機関が行う講習です。独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)のほか、自動車教習所や各種団体でも実施されています。

基礎講習のポイント

  • 期間…3日間(合計16時間以上)
  • 内容…運行管理の業務、関係法令、点呼の実施方法、指導監督の方法など
  • 費用…1万円前後(実施機関により異なる)
  • 予約…人気の日程はすぐ埋まるため早めの申込みが必要
⚠️ 講習の種類と試験の種類を一致させること
基礎講習には「貨物」と「旅客」があり、受ける試験と同じ種類の講習でなければ受験資格になりません。バス・タクシーの試験を受けるなら旅客の基礎講習です。間違えて貨物の講習を受けてしまうと、旅客試験の受験資格にはならないので必ず確認してください。
👉 基礎講習を受けたら早めに受験を
基礎講習は修了しても期限切れになるわけではありませんが、受講から時間が経つと法令改正で内容が古くなります。改善基準告示(2024年4月)や車検制度(2025年4月)のように、この資格まわりの法令はよく変わります。講習で覚えた数字が現行と違っていた、ということが起こり得るので、受けたらなるべく直近の試験に申し込むのがおすすめです。

なお、基礎講習は試験対策講座ではありません。運行管理者の業務を学ぶ講習であって、これを受ければ合格できるというものではない点に注意してください。試験勉強は別に必要です。

💻申請から受験までの流れ

試験は年2回、8月頃と3月頃に実施されます。令和3年度から筆記試験は廃止され、CBT方式(テストセンターのパソコンで受験する方式)に完全移行しました。

用意しておくもの

  • メールアドレス…受験者本人のもの
  • 本人確認書類…運転免許証・住民票・マイナンバーカードのいずれか1つ(画像またはPDF)
  • 顔写真…6ヵ月以内に撮影した正面・上三分身・帽子やサングラスなしのもの(JPEG)
  • 支払方法…コンビニ決済、クレジットカード決済、ペイジー決済から選択
  • (実務経験ルートの場合)実務経験承認者の氏名・勤務先・役職・電話番号・メールアドレス
  • (基礎講習ルートの場合)基礎講習修了証または運行管理者講習手帳の画像

申請の手順

STEP内容
1必要書類・情報を準備する
2運行管理者試験センターのサイトでメールアドレスを登録し、申請情報を入力。本人確認書類と顔写真をアップロード
3受験手数料等を支払う。実務経験ルートの場合は承認者からのメール承認を確認
4書類審査の完了後、CBT専用サイトの案内メールが届く
5試験会場と日時を予約する
6試験当日、テストセンターで受験
⚠️ 申請期間が短い
受験申請の期間は1ヵ月程度しかありません。しかも受験できるのは1回の試験につき1人1回限りで、支払い後の返金や次回への繰り越しはできません。試験センターの公式サイトで日程を確認し、期間が始まったら早めに手続きしてください。

また、CBTは会場と日時を自分で選べる方式ですが、人気の会場・日時は早く埋まります。審査完了のメールが来たらすぐ予約するのが安全です。

💰費用はいくらかかるか

項目金額備考
受験手数料6,000円非課税
システム利用料660円税込
採点結果通知手数料220円希望者のみ
基礎講習1万円前後実務経験ルートなら不要
テキスト・問題集2,000〜4,000円市販の参考書

実務経験ルートで市販テキストを1冊買った場合、1万円弱で済みます。基礎講習から受ける場合は2万円前後を見ておくとよいでしょう。

👉 会社が負担してくれることも多い
バス・タクシー・トラック会社では、会社が受験料を出してくれるケースが少なくありません。営業所に運行管理者が必要な以上、会社にとっても資格者が増えるのはメリットだからです。「取ってこい」と言われたら、まず受験料と講習費の扱いを確認してみてください。
なお金額は変更される場合があるため、申請前に必ず運行管理者試験センターの公式サイトで最新の金額を確認してください。

🎓合格後の手続き(資格者証の交付)

試験に合格しただけでは、まだ運行管理者として選任されることはできません。運行管理者資格者証の交付申請が必要です。

⚠️ 3ヵ月以内に手続きしないと合格が無効になります
合格発表日から3ヵ月以内に、最寄りの運輸支局あてに運行管理者資格者証の交付申請を行ってください。3ヵ月を経過すると合格が無効になります。せっかく受かったのに手続きを忘れて無効、というのは避けたいところです。合格を知ったらすぐ動きましょう。

合格後の流れ

  • 合格発表を確認(試験センターのサイトで公表)
  • 合格通知が届く
  • 最寄りの運輸支局へ運行管理者資格者証の交付申請(3ヵ月以内)
  • 資格者証が交付される
  • 会社が運輸支局へ選任の届出(選任した日から15日以内)
👉 資格者証は「一生モノ」ではあるが
資格者証に有効期限はありませんが、実際に選任された運行管理者は定期的に講習を受ける義務があります(一般講習は2年に1回など)。資格を取ったら終わりではなく、法令改正に追いつき続ける必要がある仕事です。

🗣️体験談:会社に言われて取った話

「運行管理者の試験、受けてくれ」 ある日、上司にそう言われました。自発的に「取りたい」と思ったわけではありません。正直、最初は面倒だなと思いました。

でも会社が受験料を出してくれる。資格があれば将来のキャリアにもプラスになる。何より、会社のお金で受ける以上、落ちるわけにはいかない。大型二種免許のときと同じで、この「逃げられない環境」が背中を押してくれました。

観光バスの運転手をしていると、会社から資格取得を勧められることがあります。筆者の会社で推奨されていたのは主に4つでした。

資格なぜバス会社で推奨されるか
運行管理者(旅客)営業所ごとに選任義務がある必須資格。運転者から管理職へのステップアップに直結
危険物取扱者 乙種第4類バスの燃料は軽油。自社給油設備がある会社もあり、車両管理や整備部門で役立つ
国内旅行業務取扱管理者自社で旅行商品を企画・販売している会社もある。ツアーの仕組みを理解できる
衛生管理者従業員50人以上の事業所で選任が必要。長時間労働になりがちな業界だからこそ健康管理が重要

この中で最初に「取ってこい」と言われたのが運行管理者(旅客)でした。それだけ会社にとって優先度が高い資格ということです。

取ってみて分かったこと 資格を取ること自体が目的ではありません。でも資格があると、「あの人は勉強する人だ」という信頼が社内で生まれます

運転手の世界は実力と経験がモノを言う業界ですが、資格という「数字で証明できる実力」も武器になります。デジタコの点数も、資格の合格も、自分を数字で示すという点では同じです。

合格したときの気持ちは、嬉しいというより安心したでした。会社から受験料を出してもらっている。落ちたら気まずいし、もう一度あの勉強をやり直さなければならない。一発で受かってよかった、というのが正直なところです。

⚠️つまずきやすいポイント

① 受験資格の勘違い

先ほども書きましたが、運転歴=実務経験ではありません。運行管理の実務経験かどうかで判断されます。会社に確認するか、確実を期すなら基礎講習を受けてください。

② 申請期間を逃す

申請期間は1ヵ月程度です。しかも年2回しかないため、逃すと次は半年後になります。試験センターのサイトをこまめに確認するか、会社の総務に日程を確認しておきましょう。

③ 講習の種類を間違える

基礎講習の「貨物」と「旅客」を取り違えると受験できません。バス・タクシーなら旅客です。

④ 合格後の交付申請を忘れる

3ヵ月を過ぎると合格が無効になります。試験勉強を頑張った後の事務手続きは気が抜けがちですが、ここで無効になるのが一番もったいないパターンです。

⑤ 古い教材で勉強してしまう

この資格まわりの法令は改正が多いです。改善基準告示は2024年4月に大きく変わり、車検を受けられる期間も2025年4月に変わりました。古い参考書の数値で覚えると、そのまま失点します。年度表記が新しいテキストを選んでください。

👉 当サイトの対策ページ
法改正に対応した解説を用意しています。改善基準告示 数字まとめには2024年改正の新旧対照表があるので、古い数字を覚えていないかのチェックに使えます。

よくある質問

Q. バスの運転手をしていれば実務経験1年になりますか?

A. 運転業務だけでは認められない場合があります。受験資格となるのは運行の管理に関する実務経験です。判断に迷う場合は基礎講習ルートのほうが確実です。

Q. 貨物と旅客、両方同時に受けられますか?

A. できません。1回の試験で受験できるのは1種類だけです。両方取りたい場合は、8月と3月の試験で1種類ずつ受験することになります。内容の約8割は共通なので、2つ目は比較的取りやすくなります。

Q. 未経験でも受験できますか?

A. できます。基礎講習を修了すれば実務経験がなくても受験可能です。転職前に資格だけ先に取っておく、という方もいます。

Q. 試験はいつ実施されますか?

A. 年2回、8月頃と3月頃です。CBT方式なので、試験期間内で日時と会場を選べます。最新の日程は運行管理者試験センターの公式サイトで確認してください。

Q. 法改正があった直後の試験はどうなりますか?

A. 原則として、改正された法令等の施行後6ヵ月間は、改正前と改正後で解答が異なる問題は出題されません。ただし過去には例外もあったため、改正内容は押さえておくのが安全です。

Q. 難易度はどのくらいですか?

A. 合格率は例年30〜40%前後です。3人に1人程度が合格する計算になります。詳しくは試験の難易度と勉強法のページをご覧ください。

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